【肉棒異変 〜 Legendary Lily of Sperm.】サンプル


 興味で動いている白黒の魔法使いがやってこないわけがなかった。慧音の思案がなくとも予測できる話である。
「なあ、慧音。『哲の童貞』ってなんだ? すごくいやらしい響きに興味津々、股キュンキュンなんだが」
「入ってきた時くらいあいさつをしたらどうかね、霧雨魔理沙」
 慧音の営む寺子屋である。そこに魔法使い然とした魔理沙がやってくるのは、幻想郷ではさして驚くべき光景でもない。
「そいつは偶然。今しようと思っていたところだ。こんにちは」
「はい、こんにちは」
 ぴょこたんと頭を下げる魔理沙に、慧音はお辞儀を返してやった。実に少女らしい少女だ、と思う。
 実は慧音の方が背が低いのだが、この点については彼女の中で「なかったことに」なっている。
 さて、と慧音は魔理沙の前に一本の肉棒を示してみせた。
 肉棒である。陰茎ともいうし、ペニスともいう。おちんちんでもよろしい。マラでもいいだろう。でかい。ただし皮を被っている。仮性の包茎だ。
 これが独立して、慧音の手の上にある。ご丁寧にふっさりとした睾丸までついていて、「オトナのおもちゃ」と呼ぶにはふさわしからぬ、生々しい質感と色合いを誇っていた。 魔理沙は興味津々の体である。おずおずと指を飛ばして鈴口に沿わせながら、わぁと声を漏らす。
「誰かのを切り取ってきたってわけじゃ……なさそうだな。切断した後とかないし」
「突然だが、ちょっと自慰をしてくれ」
「は?」
「自慰をしないと、幻想郷が爆発する」
 慧音は顔こそ真剣そのものだったし、心も真剣そのものだった。内心ではよくぞ間に合ってくれたと思っていた。早く射精させなければ、ホントに幻想郷は爆発してしまう。
 魔理沙のスカートを脱がす。ドロワーズさえも片手で足元へ。もう片方の手に載せられた「哲の童貞」を魔理沙の股間へ。おお、究極合神、ふたなり魔理沙の誕生である。ハッピーバースデー。今日は収穫祭だ。
「生えた、私に生えた!」
「自慰の仕方はわかるか」
「知らなくても手が動く。すごい、五倍以上の快感エネルギーゲインがある! あふっ、来る、なんか来る!」
「では、射精しながら聞いてほしい」
「出ちゃう、戯符『オーナニーズサン』を使いながら出ちゃうぅ!」
 二十センチはあろうかというキノコが魔理沙と合身した時、彼女の魔力は精子でパワーだったらしい。膝下をスカートとドロワーズで拘束されたまま、激しく射精を始めた。口はだらしなく開き、舌が桃色の獣のように動いたかと思えば、力尽きて垂れ下がる。
「この『哲の童貞』は生きたバイブレーションだ。なぜ今になって幻想郷にやってきたのか。とても興味があるし、また早急に封印しなければならない。こいつには唯一の鞘、というか収めるべき穴がある。それに封印しない限り」
「はふ、ふぅっ」
 魔理沙は体を震わせながら射精し続け、文机と畳を白濁した液体で汚している。もともと彼女が男根を生やしていたのではないか、と思わせるほどの馴染みようだ。
「こうして使用者の体液ボムを消費することになる、と。いや、助かったよ。もう少しで私がやらなきゃいけないところだった」
「パワーがすっからかんだ……」
「魔理沙、アリスから聞いてここへ来たって言ってたが、アリスが誰から聞いたか知ってる?」
「永遠亭の兎に聞いたとか」
「ぎゃー!」
 悲鳴が響いた。外からだ。
 魔理沙はまだ勃起したままの男根を震わせ、「なんだ」と身を起こしたが、慧音は特に動じることもなかった。
「罠を仕掛けていてね。どうやらハマッたらしい」
 果たして、寺子屋の外には尻を丸出しにしてひっくり返った、永遠亭の兎がいた。
 欲情した魔理沙は、彼女を三回犯した。


 肉棒異変、と記すことになるであろう今回の事件。
 永遠亭が絡んでいることはほぼ間違いなく、ならば「哲の童貞」を収めるための器、生きているオナホール「ラ・マンコ」もそこにあるのは明白だった。「哲の童貞」は「ラ・マンコ」と一対になって、初めて真価を発揮するのだ。
 古来より、男は情念で世界を支配し、女は彼らを影から操ってきた。男と女を結びつけるものは性であり、性は常に生の中心であった。
 その力を凝集させたのが、「哲の童貞」と「ラ・マンコ」である。生きた陰茎である「哲の童貞」は、名の通りに皮被りの童貞チンコである。生きた陰唇である「ラ・マンコ」は、名とは裏腹に桃色をした処女マンコである。それらは何度射精しようと、何度姦通しようと、決して童貞性と処女性を失うことがない。精液は濃厚であり、愛液は艶やかである。
「というわけだよ、妹紅さん」
「それはわかった。あと、今更さん付けされると気色悪い」
 慧音の解説を腕組みして聞いていた妹紅は、目を細めつつ視線を移した。
 そこでは魔理沙がミスティア・ローレライの口に肉棒を突っ込まんとしていた。「哲の童貞」の影響で欲情しているというよりは、単に気持ちいいからやってみたかっただけだろう、と慧音は思う。
 ミスティアはミスティアで、妖怪らしいアグレッシブさを発揮している。「夜雀『真夜中のオーラルマスター』で迎え撃ってやる」と息巻くほどだ。これには魔理沙も負けん気を燃え立たせたと見えて、「口撃『シュート・ザーメン』を食らえ」などとマキシマムチンコを夜雀マウスに突撃させている。肉弾幕もパワーのようだ。
「『哲の童貞』も『ラ・マンコ』も、非常に強い力を手に入れられるだけでなく、絶世の快感を得ることができる。霊魂をとろけさせる愉楽だ」
「欲の海に落ちるか。閻魔様がお怒りになりそうね」
 妹紅の瞳の中では、ミスティアを口姦する魔理沙が猛っている。その様がとても官能的で、慧音はやさしい気持ちになれた。
「フェラチオは好きかね?」
「そんなことより、永遠亭へ行くんだろう。こうなったのも、またあいつらがしょうもない企みを始めたからみたいだし」
「スルーされた」
「会話は義務じゃない。互いの興味と指向性があって初めて成立するんだ」
「聞かなくても一方的にしゃぶることがあるよ」
「おだまり」
 と、他愛もない話をしているうちに、「道草」は終わりを迎えつつあった。
「イくぜ、夜雀の口マンコでイく!」
 魔理沙が射精した。詩的表現の欠片もない言葉だ。
 だからこそ、性感にビンビンに届いてくる。
 慧音はそう思う。
「妹紅も『インケイシャブルティンティングー』を使ってみる気はないか」
「あるわけがない」
「精液は美容にいいんだぞ。ただし、消化器官での吸収ではなく、膣内で摂取することに意義がある。女性ホルモンが活性化して、肌つやが良くなるわけだ」
「チンコもマンコも色つやが大切だよな」
 魔理沙が参戦してきたので、妹紅の表情にいよいよ呆れが増した。
「ここに輝夜のやつがいたら、お前らのことを『淫乱組』って呼んだだろうよ」
「違うね。『青黒チンポデッキ』だ。『緑黒マンコデッキ』でもいい。輝夜も言う時はどこか迂遠な表現が多いから、カードゲームになぞらえるだろう。マジック・ザ・ファッキング」
「性交魔法発動、ってか」
「それは性技王」
 口腔から精液を垂らしつつ、放心してしまったミスティアはさておいて。
 慧音たちは永遠亭へと足を向けた。
 迷いの竹林は夜の静寂の中、音もなく成長を続けている。夜空には月。満月にはやや足りない形だ。
 ウサギ一匹いやしない。
「静かすぎる夜だ。これも異変のせいかな」
「この竹林って、いつもこんなもんじゃなかったか?」
 魔理沙はさすがにドロワーズを履きなおしているが、股についているものがなじまないと見えて、歩き方がぎこちない。妹紅を見る視線が胸や尻にいっているあたり、もう次のターゲットを探し求めているのかもしれない。
 慧音にしてみれば、それは妹紅よりも女としての格が下と見られていることに他ならなかったのだが、妹紅が相手なら仕方ないとも思えた。魅力的な尻の持ち主だ。肉棒をつけたら欲情するのも無理はない。
「迷いの竹林。まったく、大仰な名前をつけたものだよ。迷いは待宵に通じる。十五夜の月を待つ夜のこと。かつての異変の時は古くさい黴びた月が浮かんでいたようだが、今日の月はどのような月だろうな。生理か」
「お前は迷ってばかりだな」
「私は迷ってなどいないよ。いつだって歴史の真実はひとつ」
 ぞわり、と体を違和感が駆け抜けていった。
 慧音は立ち止まる。
「ところで、待宵にはもうひとつ意味があるんだが。妹紅、魔理沙、知っているかな」
「まあ強い」
 歩みを止めた魔理沙の口は、自信ありげに吊り上がっていた。
「白黒らしい答えだ。……ああ、慧音。知ってるよ」
 妹紅は大きく一歩を踏み出し、大樹のように悠然と構えた。
「待宵とは来るはずの人を待つ夜のこと。ようこそ、私の庭へ」
 ここは永遠亭ではない。なおも土あり竹あり空のある竹林の中である。
 だが、彼女はそこにいた。着物が汚れる気配すらなく、高貴なままに。
 蓬莱山輝夜だった。
 おもむろに、スカートの裾をゆっくりと持ち上げる。
 秘部から止めどもなく愛液が流れていた。
「『ラ・マンコ』が呼んでいる。貴方の精子が欲しいと。ようやく巡り会えたマンコとチンコのディスティニー。シコシコ星とオリモノ姫の天の川耐久デスマッチの開幕だわ」
「変態だ!」


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