【穴があったら入りたい←どう見てもグローリーホール】サンプル


 あたいはサボり魔である。認める。しかしあえて弁解させてもらうなら、それはあたいのせいでない。給料が悪い。是非曲直庁がケチなせいで、渡し守の給料は阿呆みたいに安い。詳しい額は出さないけど、築四十年のボロ長屋の家賃とトントンな程度しかもらえない。そりゃ労働意欲も出ないというものだ。
 そんなわけで死神たちは各々何かしらの副業で食っている。もちろんあたいもだ。今日は一つ、その話をしようと思う。
 再思の道をちょっと横に外れると、ボロ小屋がある。ここがあたいの副業場だ。中は小さな穴が一つ空いた壁でニ分されていて、それぞれ二畳程度。狭いけども、それだけあれば十分足りる。なにせこの小屋ですることといえば、客が壁の穴にナニを突っ込んで、あたいがそれを「処理」するだけ。外の世界の本に載ってた、グローリーホールというサービス業の真似事だ。大掛かりなものは何一つ必要ない。実際、元手はほとんどタダだった。小屋も元々あったものを作り替えただけだし。
 そして今まさに、あたいは今日の営業を始めたところだ。さっそく穴の向こうから腕が伸びてくる。その手に握られているのは金、すなわちグローリーホールの料金だ。額に応じてどう処理してやるか変わるわけである。
「あいよ、おいで」
 声をかけるとすぐ腕は引込み、待ってましたと言いたげに勃起したちんぽが突き出されてきた。形でどの種族かだいたい判断できるという特技が最近身についてきた。こいつは河童だろう。粘っこい相撲を取るが、こういうことに関してもそんな感じで持久力がある。楽しめはするけども、店としては回転率が下がるのであまり嬉しくない。
 で。そういうことを差し置いても、嫌悪感を漂わせるようなちんぽだった。皮被りで、しかも黒い。さらには、たぶん結構な期間洗っていないのだろうが、匂う。きっとこの皮を剥いたら、もっと激しい臭いになることだろう。
 もちろん河童にだって清潔感という考えはあるし、風呂にも入る。だからこれは、わざとだ。なんてったって渡された料金は、フェラチオのそれなのだから。つまりはあたいにしゃぶって清めろということ。全く、初っ端から酷い客、いや、ちんぽにぶつかったものだ。
 けれど、それは不運なんかじゃあない。むしろ、思わず舌なめずりしてしまう程度には幸先の良いスタートだ。期待に喉が鳴った。
「っくく、いいね、いいねぇ♥ この皮の下はどういう風になってんだろうね?」
 答えを知りたくて、口中にたっぷりと唾液を溜め、半分ほど露出した亀頭に垂らしていく。でろでろと、亀頭と皮の隙間から内側へ浸透していくように。そうして唾液で充分にヌルついてきはじめたところで、指先で亀頭を優しく撫ぜながら、包皮をゆっくりと剥いていった。……途端に、ハエすらも集らないような汚臭が溢れ出した。
「うわはぁ。すっごいじゃないさ。こんな汚いくっさいの、なかなか見られたもんじゃないよ」
 その原因は、露になった濃厚なチンカス。特にエラの部分なんて埋まってしまうくらいみっちりと溜まっていた。よくもまあ、ここまで放置していたものだ。自分でも耐えがたかったろうに。
 とんでもなく穢くて汚れていて、持ち主さえも顔を背けたくなりそうな肉の棒。けれどもあたいに対しては、何か逃れがたい引力を放っていた。だから自ら鼻を近づけていく。そして肺いっぱいに息を吸い込んだ。
「んはぁぁぁ……♥ 吐いちゃいそう……♥♥」
 アンモニア臭にタンパク臭、腐ったような生臭さ。「鼻が曲がりそうな」という形容がピッタリと合う悪臭で、肺が腐り落ちてしまいそうだ。思わずえずきそうになるけれども、それ以上に恍惚を覚えた。
 これだ。これがおちんぽの香り――あたいの大好きなモノの芳香だ。
 しかし、香りを楽しむだけではいけない。金を受け取っているのだし、することはきちんとしなくちゃいけない。それに、こんなご馳走を目の前にして臭いを嗅ぐだけなんて、阿呆のすることだ。
「さ、いよいよお掃除の時間といこうか……あんたのグロチン、たっぷり舐めてしゃぶって味わい尽くして、汚れの欠片一つ残らないくらいまで綺麗に掃除してあげるよ」
 一口でぱくりと、しっかり咥え込む。瞬間、味覚をブッ壊してしまいそうな最低の味があたいを襲った。ここで吐き出して、嘔吐でもするのが世間的には普通なんだろう。こんなものは生理的にも精神的にも受け入れられないはずだ。しかしあたいは、そんな汚物――いやこれはひょっとして、汚物に失礼な表現かもしれない――を、しっかり美味しくいただけてしまうぐらいには駄目になっていた。
 きっと、今口の中でクリーニングを受けている汚棒が、あたいを洗脳しようとしているのだ。脳みそから作り替えて、チンカス掃除フェラ用の雌にしようとしている。ひょっとするとその目的は、かなりのところまで達成されているのかもしれない。
 頭の中の桃色をした部分が、もっと欲しいぞ、もっと味わえと命じてくるのだ。そこはあたいの一部のくせに、意識制御下を離れたばかりか、むしろ逆に制御し返してきたのだ。
 だからあたいは、逆制御の結果として、唇を窄めておちんぽに吸いつき、ゆっくりと頭を前後させ始めた。ぐぷっ、ぐぽっ、と、ストロークに合わせ、唇から漏れでた空気が猥褻な音を立てる。もちろん使うのは唇だけじゃあない。舌もだ。舌面全体で肉幹をにゅるにゅるりと擦り上げる。こびり付く汚物を唇が削ぎ落とし、舌が回収していく。悪臭は動きのたびに口腔の中に撒き散らされ、雄の香りが隅々まで染み付いてしまいそうだ。
 こうして掃除されていく恥垢の全てが、胃に送られ消化され、アレコレを経て最終的にあたいの血肉となるのだ。――チンカス由来の身体。何もしていなくとも、どんどん淫乱になってしまえそうだ。
「ぐぷっ、れろぉぉぉッ……♥ っは、馬鹿だねぇあたいは。チンカスだよこれ? なんでそんなもん食ってんだろうね? しかも、なんでこんなにマズいのに、こんなに美味いのかねぇ……♥♥」
 もうこれは、一種の立派なグルメだ。あの大食亡霊も手をつけるかわからない、最悪のゲテモノグルメだった。けれどあたいはこの食事で、天にも昇る心地になれる。
 もちろん、この味は危険だからすぐさま吐き出せと命じている部分が、あたいの中に無いではない。けれど、それはどんどん薄れつつあった。比例するように甘美さが増し、下品な音を立てるフェラチオが病みつきになってきている。
 ところで――こんな病的な奉仕を、あえてわざわざやりたがる場所が、口以外にも一箇所あった。奇遇にもそれは、「口」と形容される場所だった。子供を作るためにある、女性の身体でも最も大切な、そして大切にされなくてはならない部分……すなわち、あたいのおまんこ。
 スカートをはぐって、更に指を伸ばす。下着越しに触れたそこは、すでに随分と昂っているようだった。布越しに少し触っただけだというのに、随分と過敏に反応した。
 駄目になりつつあるあたいの脳みそはそこでこう考えた。そもそも何故下着などつけているのかと。これは貞操を守るための道具である。ならば、今この瞬間には、最も不要なものの一つだろう。
 だから何のためらいもなく下ろした。見れば、下の口が垂らした涎で染みまでできてしまっていた。おちんぽ咥えただけでこうなるだなんて、ひどい駄目まんこだ。
「ンひっ、んくぅぅ♥」
 ここまで濡れていれば指だって簡単に潜り込む。ぱくぱくと収縮する膣の中へ滑りこませた。お望みのものより細いし射精もしないけれど、そこは妥協してもらうとしよう。
 飢えていたソコはそんな代替品でも構わず食いつき、締めつけた。我が身体ながら、随分とまあ貪欲なことだ。こうして仕事中に堪えられなくなって自分を慰めることは今までも度々あったけれど、今日は格段に求めている。
 とはいえ、オナニーに没頭するわけにもいかない。あくまで今はサービスの最中だ。奉仕もこなさなくちゃならない。それが悩ましいところだった。
「ぷはァ……♥ おおー。綺麗になったじゃないか、さぞさっぱりしたろう? ふふっ。あたいの口、すっかりおちんぽ掃除便器にされちまって……♥♥」
 顎も疲れてきたところだったので、一旦口を離した。あれだけカスにまみれていたのに、今となってはツルツルに綺麗なおちんぽとなっていた。掃除の甲斐があったというものだ。我ながらいい仕事をしたと思う。
 唾液でぬらぬらと光るソレは、突き出されたはじめの頃よりも更に硬く大きくなっていた。赤黒い血管が走り、脈打っている。そろそろ射精するのだ。
「いいよ、来な。たっぷり溜まってるんだろ? 中身全部出してさぁ、あたいに白く化粧しておくれよ」


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