改造人間タカ


 朝、起きると俺は拘束されていた。

「ここはいったい?」

 疑問を口にする。両手両足、身体全体がベッドに拘束されている。
 薄暗い部屋の中、俺は拉致監禁に近い状態に置かれていた。

「タカさん、目が覚めましたか?」
「お、お前は」

 そう、俺を拉致監禁していたのはとても見知った人物であった。

「やっと僕だけのモノになってくれた」
「な、ながみん……」

 見知った人物、それは知り合いのながみんだった。
 ながみん、彼は組織により神経細胞を猛毒に犯され、昏睡状態の植物人間となって病院に隔離されていたはずなのに……なぜこんなところに? 俺は状況がまったく飲み込めなかった。
 どうして植物人間となったながみんがここに? 
 何故俺は監禁されているのか? 
 そういった様々な状態が俺を混乱状態に陥れる。

「タカさん、どうしてって顔してるね。全部教えてあげるよ。僕はね、タカさんのことが」
「ウオオオアアオオアアーーーーーッッッッ!!!!」

 俺はパニックになった。

「タ、タカさん! 落ち着いて! 真相が知りたくないの!?」
「ウオオオアアオオアアーーーーーッッッッ!!!!!」

 俺はながみんの顔面を全力の力で殴る。
 ブバアァンッ! 
 ながみんの顔面は粉々に砕け散った! 
 俺は暴走した。そして拘束具やベッドを筋肉で破壊して部屋から飛びだした!

「ウオオオアアオオアアーーーーーッッッッ!!!!」

 部屋の外はジャングルになっていた。

「アムッ! ングッ!」

 俺は地面の土を片手で鷲掴み、おもむろに食す。

「この土の味はアマゾン! ウオオオアアオオアアーーーーーッッッッ!!!!」

 俺はどうやらアマゾン奥地まで来ちまったらしい。トホホ。
 そこから俺のアマゾンの生活が始まった。現地人との交流、猿との死闘、猿との死闘。そして、猿との死闘。俺は半年間、アマゾンに揉まれてより強くなった。
 男の中の男としてまた磨きがかかった。

「00010010100010011101010」

 そして俺は人の言葉を忘れてしまった。

「01010010010」

 俺はアマゾンの森林を焼き払った。もはや俺は俺ではなくなってしまった。ただの機械、マシーンだ。
 アマゾンの神秘によって、宇宙と交信してしまった。
 変なキノコを食べてしまった。
 俺は最強となったのだ。
 自我が保てなくなってしまった。俺は、俺は、俺は……

「タカ……目を覚ますのです……タカや……」
「ハッ!」

 俺は幻覚から目を覚ます。
 気がつくと周りには猛毒を持った蛇がたくさんいた。そして猛毒を操るのは……。

「なぁんだ、もう目が覚めたんだ。幻覚をみたまま死ねばよかったのに」

 ながみん。永遠のライバルだった。

「気がついたのですね」
「ああ」

 そして俺を幻覚から解放してくれた人物。それは冥王ながもんだった。
 ながもんはながみんの良心。言うなればピッコロのようなものだ。ながもんとながみんは元々ひとつの存在だった。それが分離してしまったのである。そして悪しき心……それがながみんだった。

「ながもんさん、俺はあんたに恩返しするぜ。こいよ、ながみん。決着をつけようじゃないか」

 俺は肩に仕込んでおいた超高性能遠隔レーザー装置でながみんのこめかみを打ち抜く。

「グオオオオ! 飛び道具は卑怯だぞォ! 死」

 ついにながみんを倒した。俺の戦いは終わったのである。

「タカ、やったな!」

 俺は肩に仕込んでおいた超高性能遠隔レーザー装置でながもんのこめかみを打ち抜く。

「グオオオオ! 何で俺まで! 死」

 ついにながもんも倒した。俺の本当の戦いは終わったのである。

「ながもんもながみんも死んだ! ついに俺の天下だ! ガッハッハ! ここにサンフラ帝国を築くぞ! ほら、男ども! 尻じゃ! 尻を出せぃ! ンアッ−!」

 高らかに笑う。邪魔者はもういない。世界は俺のもの。俺の名はタカ。世界の支配者タカ。神様、仏様、タカ様。こうして俺は………………。

「……さん! タカさん! 起きて! ほら、ライブ始まっちゃうよ!」
「んっ……えっ、ここは。あれ、タカ帝国は?」
「何言ってんの!? ライブ直前にいねむりとかぶっちゃけあり得な〜い! 体調管理はしっかりとね!」

 どうやら俺はうたたねしてたらしい。ここはライブ会場の楽屋だ。

「前日まで風邪だったのはわかるけど、ライブ始まるんだからしっかりして! ほら、もうすぐ出番だし!」

 clameの激しい喝が俺に飛ぶ。
 今日は東方アレンジオンリーライヴイベント『locked girl consideration #2 』(http://sobaumai.yahansugi.com/index.html )。もちろんサンフラも参加する。
 どうやら前日まで風邪をひいていたために、ライブ直前だというのにうたた寝をしてしまったらしい。
 同じバンドメンバー、サンフラのclameに叱られて蹴りを入れられてしまった。帰って手術を受けなければならないほどの重傷だ。全身を複雑骨折してしまった。

「やれやれ、変な夢だったぜ」

 俺は夢でよかった、と安堵する。

「ほら、ライブ始まるよ!」
「ああ、湧かせてやろうぜ……俺たちのオーディエンスをな! ……どうも−! マイネーム・イズ・タカ! ファインセンキュー! シンジルココロ!」

 こうして俺たちサンフラは舞台に繰り出した。
 これで俺の変な夢の話は終わりだ。

「ふふふ……タカさん、愛してるよ……ふふふふ……」

 だが、そんな俺を舞台袖で観ている人物が一人。

「夢の中では手に入れ損ねたけど、次はタカさんのこと……手に入れてみせる」

 きらりと光る眼鏡。ながみんは俺を見つめながら自慰をし、次の計画を練るのであった……。




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