不撓不屈のハタテダイバー



 同人誌即売会に初参加する時「完売して売れっ子になったらどうしよう」と一瞬でも考えることはないだろうか。ひょっとしたら売れに売れて人気者に、という淡い希望を抱いて参加する人は少なくない……はず。
 だけど、現実は非情である。

「あ〜あ、やっぱり売れないか……」

 地方の小さい即売会。東方オンリーイベント。来ている人は多いが、自分のスペースに立ち止まってくれる人は誰一人としていない。
 僕、姫海棠はたてはうなだれた。
 正確には《姫海棠はたてのコスプレをした僕》なのだが。
 昔から同人誌即売会には興味があった。そして近年、東方を知ってますます興味を持って一般参加を繰り返した。参加していくうちに「いつしか自分もサークル参加したい」と思うようになった。
 だけど、僕は絵が下手だ。
 絵が下手でも好きという気持ちがあればいい、と偉い人はいうけれど……現実は冷たい。好きだけじゃ手にとってもらえない。好きだからこそ上手な絵を描けるようにならなければいけない。
 でも、僕には実力がなかった。サークル参加を申し込んだはいいものの、ちょっとやそこらでみんなの手に取ってもらえるような絵が描けるようになるかといえば……無理だった。
 それでも印刷費やら参加費やらお金はかかるし、何より手に取って、読んでもらいたいという気持ちは強かった。どうしても僕の本を読んで欲しい、でも絵は致命的にセンスがない。
 ……じゃあどうすればいいか?

「せっかく女装コスまでしたのに……」

 こんな話を聞いたことがある。「女性レイヤーが売り子をしてると売り上げがあがる」という、嘘のような本当のような嘘のような……真実は闇に、といった感じの話だ。
 それにあやかって、僕の出した新刊《はたてちゃんがお尻の快楽にハマるようです》の内容にあわせてはたてコスを決意した……のだが、僕は男だ。でも、昔から女に似てるといわれていたのでもしかしたらに賭けてみた。
 ここだけの話、自分でも自分のことが可愛く見える。ナルシストかもしれないけど、コスプレをした瞬間そこには自分の理想のはたてちゃんが存在したのだ。
 女装というのは、自分の理想の女性像に投影するものだという。つまり、女装した僕は自分自身の理想であるはたてちゃんになっているということだ。
 自分はカワイイ!
 でも、コスプレしたところで女装は女装。本当の女の子に勝てるわけはなく……全然本は売れていなかった。

「あーあ……こんなことなら参加するんじゃなかったな……」

 売れ残った本がスペースに山積みになっている。一冊も売れていないという現実を直視するのが辛い。
 惨めだ。
 まだイベントが終わるまで時間はあるが、もう帰ってしまおうか。
 虚無感に襲われながらスペースの撤収準備をしていると、スペースの前に誰かが来た。

「あれ、もう帰っちゃうの?」
「あっ……」

 僕が本を出そうと思ったきっかけはもうひとつある。スペースに来てくれたのは知り合いの有名絵師さんだった。某イラストSNSに投稿すれば上位に組み込むランカーであり、同人イベントでもいつもシャッター前サークル。僕のあこがれの絵師さんだ。
 この人とはツイッターを始めたころに出会った。当時はお互いに無名だったが、いつの間にか有名絵師さんは実力と運でどんどん頂点に上り詰めていった。僕はただただ、それを見ていることしか出来なかった。
 だけど僕が本を出そうと思ったとき、協力してくれたのがこの絵師さんだった。躊躇している僕の背中を押してくれた。とても感謝している。
 だからこそ、一冊も手に取ってもらえなかったことは有名絵師さんにも申し訳ない気持ちになる。僕は目を伏せることしか出来なかった。目があったら泣いてしまいそうなほど見窄らしいから。

「まだまだイベントが終わるまで時間があるよ?」
「でも……もういても仕方ないかなって」
「そうかな? せっかくコスプレまでしたのに勿体ない。もっとイベントを楽しまなきゃ」
「うう……そうですかね」

 確かに僕はもっとイベントを楽しみたかった。だけど、こんな気持ちじゃ楽しめるわけもなく。
 そんな考えが表情に出てしまっていたらしく、察した絵師さんは気遣いの言葉をかけてくれる。

「そんな顔してちゃダメだよ。ほら、それじゃ俺が楽しいこと教えてあげるよ」
「楽しいこと……?」
「ほら、付いてきて!」

 絵師さんは僕の手を掴んで、どこかへ連れていこうとする。
 このままだと悲しい思い出しか残らないしな……。そう思った僕は、絵師さんに付いていくことにしたのだった。



 ★★★★★★★★★★



「ほら、しゃぶれよ」
「はい……んじゅる、れろれろっ♪ ジュプルっ……んちゅ、じゅるっ、じゅぽぉっ♪」

 どうしてこんなことに。
 僕は気がついたら男子便所の個室で絵師さんの男性器をしゃぶっていた。

「うまいじゃないか。やっぱチンポは男にしゃぶってもらうに限るな」
「んふ、れろぉっ……ちゅ、ちゅぶっ。チュブっ……ジュルルルルルルっ♪」

 訳がわからない。でも舐めているから仕方がない。僕は絵師さんの汚らしい肉棒をスースーするスカートをなびかせながらしゃぶっていた。

「ほら、俺ってホモなんだよね。だからお前にイベント勧めたしコスプレするように仕向けたわけ」
「そ、そんな……じゅぷるるるる、レロレロレロレロ、あむじゅぽぉおぉおっ♪」

 突然のカミングアウト。でも、どうでもよかった。とりあえずしゃぶる。僕は目の前のチンポをしゃぶる。フェラチオする機械になる。
 それが姫海棠はたてのコスプレをした男の宿命だから。

「だからさ、俺とエッチしてくれよ。エッチしてくれたら新刊買ってやるよ、絵も教えてやる」
「ペロペロ、レロレロ……そ、それならエッチします……」

 実は、絵師さんの下心に最初から気がついていた。こんな僕に優しくしてくれるのは、何か下心があるからだと知っていた。
 まさか、ホモだとは思わなかったけど。でも、嬉しかった。僕を必要としてくれた人がいたから。
 イベント中ずっと孤独だった。だけど絵師さんだけは僕のことを見てくれた。
 ひょっとしたら自分は自暴自棄なのかもしれない。でもそれでもいい。新しい世界が見たい。抵抗心もない。
 覚悟はとっくに完了していた。

「じゃあもっと根本までしゃぶれ」
「あむぅぅうぅっ、レロレロっ、んちゅうぅぅうっ♪」

 僕は自分の呼吸が苦しくなるくらい絵師さんのチンポを根本まで咥えて、喉奥で締め付けるように責め立てる。

「はたてコスの男にチンポしゃぶられてると思うと本当に最高の気分だ」 
「んぅううっ、れろじゅるるるっ、はぁんっ♪」

 息が出来なくなりながらも、喉チンコまで駆使して絵師さんの野太いチンポをしゃぶりあげる。
 ニオイと味が口内に広がって何も考えられなくなる。これが男の味だと思うと自分のチンポまで勃起してしまう。ダメだ、興奮してきた。
 僕は鼻息を荒げながら空いてる手で自分の竿をシゴきあげる。フェラチオしながらのオナニーという変態行為に手の動きも速くなる。

「へへ、フェラしながらオナニーするとはサービスがいいな。もしかして最初から俺のチンポをオカズにシコりたかったんじゃないか?」
「ち、違いますう……これは、生理現象だから……違うんですぅ……♪」

 生理現象だからオナニーするのも仕方無い。男は海綿体に素直にならなければいけないからだ。
 ホモチンポしゃぶってホモオナニーするホモはたてなのもきっと海綿体の織りなした生理現象だ。そうに違いない。

「へへ、そんなに生理現象に逆らえないならな……薬を塗ってやるよ」
「く、くすり……?」

 一心不乱にチンポをしゃぶっていると、絵師さんは懐から歯磨き粉のチューブのようなものを取り出した。チューブから透明な液体を出すと自分の指につけ、そのまま僕の肉棒にすり込んでいく。
 絵師さんの指のこそばゆい感触と、液体のひんやりした感触が僕のチンポをまさぐる。これだけでも射精してしまいそうなほど気持ちが良い。
 他愛のないことを考えていた次の瞬間、陰茎が急に熱く火照りだした。

「ひゃあああああっ! あ、熱いぃ……♪」

 驚くほど火照る肉棒に戸惑う僕。

「どうだ、特製媚薬だ。海外から取り寄せた特注品だ。チンポが疼いてきただろう? 世界のホモが愛用している媚薬だからな」

 火照りと共に陰茎がとってもむず痒くなる。
 はやく弄らないと辛い。死にそうなほど辛い。
 自分で肉棒を握って上下に何度も何度もシゴきあげようとする。だが、一向に気持ち良くはならない。ましてや痒みが増すばかりである。

「ああぁんっ♪ 自分でシコってもシコっても物足りないぃ……♪ いじってぇ……チンポいじってくださいぃ……♪ 媚薬っ、媚薬酷すぎるぅ……っ♪」

 気が狂いそうなほどチンポに全神経が集中する。
 はやくこの痒みを何とかしてもらわないと、脳の血管が切れて死んでしまうかもしれない。
 意味のわからないことを考えてしまうくらい切羽詰まっていた。
 とにかくチンポのことしか考えられない。チンポ、チンポ、チンポ、ホモ、チンポ、チンポ、チンポ、チンポ、チンポ。
 誰か解放してくれと言わんばかりに脳内がチンポのことで染まる。

「いじるのはここだけにしてやるよ」
「くぅううぅっ、キンタマだけだなんて酷いっ♪ 酷すぎるぅっ♪ チンポに媚薬塗ったくせに弄るのはキンタマだけだなんて酷すぎるぅっ♪」
「やっぱりはたては虐めてナンボだな」

 僕が必死になっているのとは対照的に、絵師さんはほくそ笑むばかりである。憎い。でもチンポの火照りを何とかしてくれるのも絵師さんしかいない。
 懇願するように絵師さんを見つめると、勘弁してくれたのか絵師さんが様式便座に腰掛ける。

「ほら、それじゃイカせてやるよ。俺の上に座れ」
「す、座る……?」

 座れ、と言われるがそこにあるのは。

「わかってるよな」

 絵師さんの充血するほどに勃起している、僕の唾液でヌルヌルになったチンポである。
 わかっているよな、とはそういうことだ。チンポを弄ってくるわけではなかったが、アナルを掘られることによって痒みが中和されるかもしれない。
 僕は躊躇せずに一気に絵師さんのチンポめがけて腰を落とす。
 すると思っていたよりも自分のアナルがゆるく、すんなりとチンポを受け入れた。日頃のアナニーの成果である。

「く、くぅううぅぅっ♪ ズボズボ入ってるぅっ♪ チンポ挿入しちゃってるぅうぅっ♪」
「ははっ! はたては自分からチンポ咥え込むんだもんな! しかもアナルで! 本当にド変態だなぁ!」
「酷いぃ……酷いよぉ……♪」
「否定してるくせに何てトロ顔だよ。本当にはたては恥知らずだな! しかも男だし! ホモだよ、ホモ! はたてはホモ! おら、動け!」

 絵師さんの暴言よりも自分のチンポのことのほうが大事だ。何度も何度も腰を動かし、アナル快楽を貪る。幸い掘られてる間は、ホモセックスしてる間は火照りのことを忘れられる。
 アナルが気持ち良すぎることに戸惑う自分もいた。女性よりも感じているんじゃないかと錯覚するほどチンポをねじ込まれることに幸せを感じていた。
 ひょっとしたら僕は元々ホモの素質があったのかもしれない。

「ふんっ……ふんっ……くぅんっ……♪」
「おお、はたてちゃんのホモ穴とっても気持ちいいよ」

 ぶっといグロテスクチンポが僕のホモ肛門をグリグリと刺激する。狂いそうになりながらホモセックスに夢中になる僕自身が愛おしくて仕方無い。
 そして突然、絵師さんから思わぬアドバイスを貰う。

「ほら、ここは即売会だ。はたてに足りなかったのはセクシーさだ。これからの即売会、もっと媚び売っていかないと。ほら、お前なりのセクシーさを演出してみろよ」

 何を言っているのだろう、この人は。
 だけど、セックスを楽しむにはより常軌を逸したことをしなくてはならない。それが変態の国JAPANだから。・
 僕は尻を掘られながら、この場を即売会場に見立てて口上を垂れる。

「し、新刊一部買うことにおちんちんを自由にしていいですぅ……♪」
「ははは、これはいいや! もっとやれ! 即売会で身体売れよ!」
「ぼ、僕の新刊一冊でおちんちんか手コキ、三冊でおくち、五冊でアナル弄んでくださいぃいっ♪」

 エアスペースにてエア参加者に向かってエアアピールしてエア頒布。
 はたてコスの変態男はアナルセックスでヨガりながら同人誌のためホモ媚びしてしまうのである。チンポ快楽に身をゆだねて、それ以外何も考えずにエロいことするのって何て素晴らしいのだろう。

「同人誌即売会でホモしたいんですっ♪ はたて、ホモしますうぅうっ♪ あんっ、ああぁんっ♪ いやぁんっ♪」
「ほら、俺が一冊買ってやるよっ!」
「ほ、本当ですかぁっ♪ ありがとうございますっ♪ チンポ、いじってっ♪ はたてチンポいじり倒してくださいいぃぃっ♪」

 もう我慢出来ないといった感じで、一旦腰を思いっきり引いて間を置く絵師さん。

「えっ……」

 と思った次の瞬間、丸太のように一気に腰を打ち付けてアナルを掘り貫く。
 油断していた僕は衝撃に耐えられず、頭の中が一瞬で真っ白になってしまった。
 さらに絵師さんのチンポが一回り大きく膨れあがった。

「ただしお代はザーメンでな! くっ、イクぞおぉぉおおぉっ!」
「ひ、ひゃああぁああぁ〜〜〜〜〜んっ♪」




 ビュルルルッ! どくどくっ! ドピュ〜ッッッッ! ドクドクドクドクッ! ピュルルルルッ! ピュバッッッッ! ドボッ! ぷっ、ドピュルル、ぶびゅるるぅ! ドプンッ、どぴゅ、びゅるるるッッッ! ドピュピュッ! ビュビュビュ、ビュルル!




「はぁあぁんっ♪ ケツ穴熱いっ♪ はたての尻穴ファインダーにちんぽみるくドッピュドピュだよぉ……♪ びゅるびゅるっ♪ びゅるるる〜〜〜んっ♪」

 絶頂。
 絵師さんの射精と同時に僕のチンポも大量にスペルマを放出した。まさか中出しアクメをキメてしまうと思わなかった僕は、思わぬ快楽に唾液を垂れ流す。
 そして射精と共にチンポの火照りが収まり、とりあえずは一安心である。
 イキ顔を晒す僕に向かって絵師さんは愛の言葉を囁くように声をかけてくれる。

「これでお前も東方同人界隈の仲間入りだ。おめでとう」
「んひぃ……女装ホモセックスで……一人前になっちゃいましたぁ……♪ ピ〜スっ♪ ダブルピ〜スっ♪」
「へへ、カワイイやつめ」

 ホモセックスの締めはダブルピースで決まり。
 こうして僕は女装ホモに目覚めてしまった。絵師さんとも今ではツイッターで噂になるくらいの世間公認ホモカップルだ。
 今では同人誌じゃなくてコスプレROMを頒布している。そっちのほうが向いているしやってても楽しいからだ。
 当然中身ははたてちゃんのコスプレをして、ホモセックスに勤しむモノだ。
 頒布して、その売り上げでホモセックスして、行為をROMにしてまた頒布する。無限ループのできあがりだ。
 はぁ、同人活動しててホモに出会えて本当によかった。
 これからの同人活動もきっと気持ちいいことが待ってるんだろうな。考えただけで腸液がだだ漏れだ。これからも同人界隈の腐海にダイブしていこうと思う。
 こうして僕はホモ活動に没頭し、それに釣られてか姫海棠はたてはホモにも人気が出て、次の年の東方人気投票で少しだけ順位が上がるのでした。めでたし。



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