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【タイトル】
ゆうかりんをぐるぐると回す。お鍋にゆうかりんとヤドクガエルと有機水銀と、彼女が僕より可愛がっていた白い花を入れて、火にかけてゆっくり回していく。おいしくなあれ、おいしくなあれって呟きながら時々浮かんでくるゆうかりんの頭をお玉の先っちょでまた紫色の海に沈めてやる。オリーブオイルと安売りの蟹と、医者を騙して大量に貰った精神安定剤の粒を追加して、足りなかった水分を僕の右目から零れ落ちる感情の雫で補う。ある程度火が通ったら弱火にして、僕とゆうかりんの素敵な思い出の数々を細かく刻んでぽちゃぽちゃと鍋に入れてやる。思い出というよりそれは薄くて頼りない記憶の数々で、風に吹かれると鳥になって山の向こうを目指して飛んで行ってしまうようなもの。ゆうかりんが笑った時の顔、怒った顔、滅多に見せない泣き顔。いつも僕とは違う方を向いていて、僕の見えないものを見ていたゆうかりん。そんなゆうかりんの表面は乾いてパリパリになっていたので手で簡単にちぎることができた。そしてこっちは腐ってブヨブヨになってしまった僕。義務教育を受けるよりもゆうかりんを何度も何度も脳内で嬲り続けてその綺麗な顔を更に美しくするためにツバを吐き続けることを選択した僕の塊。鍋にぽとんと優しく飛び込んだ瞬間に、はじけて混ざってふたつがひとつになって、何よりも暗くて透き通る光を放った。その光の中に、昔は僕と手を繋いでいてくれた誰かのぬくもりを感じられたような、そんな気がした。気が付くと目の前には一つの緑色の林檎が置いてあっただけで、雲すら高いところを泳ぐのを止めていた。品の無い魔女がそれをつまみあげて、籠に入れて布を被せてしまう。心地良いくらい嫌らしい笑みを浮かべたまま、森の奥へそろりそろりと歩き出す。目と鼻を持っていなくて、首から下もどこかに忘れてきてしまった白雪姫。疑う事も知らずに魔女から受け取った林檎に齧り付くと、白雪姫は自分の名前が「風見幽香」であるという事を思い出したようで、精一杯涙を流すフリをしていた。螺旋階段が魔女の右手と左手に降りかかる中で、ゆうかりんだったそれは祈りを込めて森を作った。微笑みで出来た森の中をまた魔女は歩いていくのだろう、良く出来た林檎を携えて。暖炉の中で薪が楽しそうに音を立てて、僕はゆうかりんの絵本を閉じる。外から聞こえる呻き声が耳に残って非常に不愉快で、役に立たない耳栓を引っこ抜くとそのまま暖炉に放り込んでやった。このまま絵本も投げ込んでやろうかと思ったが、既の所で右手を思いとどまらせた何かが甘い声で誘惑してくる。お鍋に入れよう。またゆうかりんの頭が浮かんできていたので、お玉を鍋底に擦り付けるようにグリグリとしてみる。本をそのまま突っ込んで、スイートチリソースと、一度も使わなかった赤の絵の具も一緒に旅立たせてやる。そのままスキップするように混ぜ続けると、鍋が「おいしくなったよ」と言ったので、誰も見てないのをいいことに、そのまま身体全体で味わってみた。べたついた何かと自分の身体の境界が曖昧になった時に、僕はこの世の全てが嘘であるということを心で理解した。最後の白と黒で湖面に映る景色を眺めていたら、誰かがこっちを見ているのがわかった。お玉の先が僕の黒を押し込んで、鍋の底で磨り潰してしまった。泡になる事だけはかろうじて許されたので、ふよふよとコドモみたいに浮かんでいって、そいつの目の前でパチンと身体を散らせてみた。思い返すのはいつかの言葉、心から憎んだあのゆうかりんが言うには、毒を毒だと決めるのは自分自身だということ。少なくとも地面は毒で出来ていると思っていたので、ちょっぴり笑えた。 
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 メンバープロフィール

・麻宮ミヤネ 
「……なんて幽香的!」
 力強い愛憎とパンクロックを、ただひたすら文字に起こす物書き。独特のセンスが織りなす日本語と、奇妙な言葉遊びでほんのごく一部から熱い支持を得られている、はず。暑苦しいくらいの言葉をデコレ―ジョンした音楽のような文章で、読み手を困惑させる。本誌では風見幽香という『妖怪』の『人間らしさ』を苦しんで苦しんで、そしてプリミティブに書く。


・東方の風見幽香さんを愛し続けてみた
「ね!ゆうかりん!うふふふふふふ」
 毎日1レス分の文量で書く「ゆうかりん日記」を主とし、風見幽香を主とした文章を書いている。昔は2ちゃんねるを中心に活動していたが、現在は東方創想話や同人誌などで拠点を移している。その抑えきれないほどの愛情が読み手を魅了する。今回は1つの物語と4つの日記で風見幽香を愛し、愛される。


・桜井土星
「東方は常にハッピーエンドであってほしいんです」
 同人サークル「ヘルガプリズン」の縁の下の力持ち。なかなか表に出てこないが彼の実力は確かなモノであり、実は某賞の選考に残った経験もある。今回は珍しく表舞台に出てきたようで、ゆうかりんとメディスン、アリスの関係を赤裸々に書き綴った。愛称はボストロール桜井。ゴリラが大好き。


・三三
「感情を絵に、創造を絵に――新進気鋭の実力派」
 残酷、だけど愛のある世界をイラストや漫画、多方面に渡って描く注目の絵師。成長スピード、そして何よりも筆の速さでクオリティーの高い作品を多く創り出す。今回は『毒』というテーマを最大限に絵に込め、幽香の毒々しい心情を表紙に描いた。愛くるしく棘のある絵柄は独創的な世界観を生み出す。


・ありしゅが
「狂おしいほどにアバンギャルド、切ないほどにディープ」
 メランコリックな路線を突き進む脳みそゆるふわ美術系ガール。ゴシックでメロウでダークでトラウマでプロパガンダでロマンチックでフェティッシュでヘビーでポップでサディスティックでマゾヒスティックでリアリスト。そんな彼女が描く「ゆうかりん」は美しくも、狂おしい。


・ながみん
「浪速のバイオニックシリコンバレー」
 ここ一年でメキメキと頭角を現した、一部で話題の若手絵師。彼の手腕と優しい絵柄の評価は高い。周囲をまとめるリーダーシップもあり、同じく華激の宴で20のアレンジと16のイラストで送る幽アリ合同を発行する。今回、桜井土星に実力を買われ本誌に参加。物語のシーンを忠実に再現する。


・ケイトウ(鶏頭)
「現実と戦うウサ」
 しっかり描き込んだ漫画作品が特徴的。その腕を買われて東方の風見幽香さんを愛し続けてみた原作「あいゆえにゆうかりん」「あと二週間の命でも風見幽香さんを愛し続けてみた」の漫画を担当した。特に「あいゆえにゆうかりん」は初参加のイベントで一瞬にして完売させるほど。今回、さらにタッグを組んで幽香を描く。失踪中。



・さのつき
「今夜お前を殺しに行く」
 キュートな絵柄の中に秘めた芯のしっかりしたイラストを、キャンバス上に注ぎきる本格イラストレーター。サークル「さくらは」で北陸を主とし同人活動を行う。ポップで愛しい絵柄から、氏のイラストを支持する者は多い。その手腕で風見幽香の可愛さを最大限に引き出す。

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「私たちは風見幽香に毒されてしまいました」

 妖怪『風見幽香』は自らの華で他者を愛に狂わせる。
 その愛は、毒のように心を犯す。
 中毒的に彼女を求め、精神毒が思考を溶かす。
 そこに解毒剤は存在しない。
 私たちは風見幽香からは逃れられない。
 ならば、彼女にどのようにして対抗すればいいのか。

 ――毒を以て毒を制す、愛を以て愛を制す。

 毒には毒を、愛には愛を。
 ありったけの愛情と愛憎を、文章に詰め込んで。
 とびっきりの恋情と恋慕を、絵画に詰め込んで。
 そこから見た世界は風見幽香を制し、風見幽香を表現しているだろうから。
 きっと、私たちは風見幽香を制す。
 あの花いっぱいの毒を、彼女に。


 独自の活動路線を突き進む個性派サークル「ヘルガプリズン」と、風見幽香に愛情を注ぐ一途な愛が各地で注目される「東方の風見幽香さんを愛し続けてみた」が風見幽香オンリー《華激ノ宴》で熱烈コラボレーション!
 テーマを『毒』と決めて、それぞれの作家が実力派絵師と組んで風見幽香の物語を紡ぎます。
 風見幽香が毒々しく他人を愛する4つの物語を全98ページの一冊に収めました。
 表紙に、独特のタッチでキャラクターの感情を描く若手実力派絵師
三三
を起用し、各物語に風見幽香の魅力を最大限に引き出す挿絵を豪華絵師たちが描き下ろし。
 風見幽香に毒されたように愛される、風見幽香が毒の人形少女に興味を持つ、風見幽香と中毒的な日常を過ごす、風見幽香が恋という害毒に伏す……色々な角度から劇物のような彼女の魅力を是非とも堪能してください。
 文章だからこそ出来る、挿絵だからこそ出来る風見幽香の表現……そんなデモニッシュな本が濃厚に仕上がりました。
 を食らわば皿まで。
 是非とも風見幽香という料理を、風見幽香というを、是非とも皿まで味わってください!



収録作品
【東方の風見幽香さんに狂おしいほど愛されたい】
風見幽香さんを愛し続けてみた×ケイトウ

【アリスチック・ドリーミング・ドール・アンド・フラワー】
桜井土星×ながみん

【東方の風見幽香さんを毒々しく愛し続けてみた】
風見幽香さんを愛し続けてみた×さのつき

【脳内メルヘンなメンタルは、きっと白雪姫に憧れるのよ】
麻宮ミヤネ×ありしゅが


本誌サンプル




参加メンバー

『文章サイド』

麻宮ミヤネ(ヘルガプリズン)


東方の風見幽香さんを愛し続けてみた(東方の風見幽香さんを愛し続けてみた)


桜井土星(ヘルガプリズン)




『挿絵サイド』

表紙
三三(たこ部屋)

ありしゅが(ゼリー缶)

ケイトウ(MOKUMOKU)


ながみん(キウイボックス)


さのつき(さくらは)





印刷所
コミックモール




 華激の宴 百合10「おせちプリズン」スペースにて頒布
 全年齢対象 新書サイズ 98ページ
 会場価格500円

【会場限定特典準備中】



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